2009年3月23日 (月)

読切小説

「インターホン ウエイター」

 私はかれこれ3時間はこうして玄関の前でドアノブを握って待機している。iPodがなかったらできなかったことだろう。これも文明のおかげだ。近頃、有効なダイエット法としてテレビで紹介されたのかと思ってしまうほどピンポンダッシュによくあう。今日こそ犯人を捕まえてやろうとこうして、隠れ続けている。その間ポケットにいれてる携帯電話が一度も震えなかったのは、私の暇さを表しているようで少し寂しかったけれど。
 シャッフルで気に食わない曲がかかった調度その時、インターホンの音が狭い部屋中に鳴り響いた。
「何!?」多分ピンポンの余韻も鳴り止む前にドアを開けた。ざまぁ見ろ。被害者なめるなよ。
「……すいません。宅配便です…」
こんな日に限ってロクに友達のいない上京1ヶ月目の私に配達がくるなんて。私の顔は赤くなり、郵便局の人も申し訳なさ気な顔をしていた。母からだ。どうせ作りすぎた苦い野菜を送ってきたんだ。配達員の人は苦笑いしてそそくさと帰っていった。私は早速母に電話する。
「ちょっとお母さん!?今私かなり恥ずかしい思いしたんだけど!」
「現在おかけになった電話番号は――――」
そうだ、両親共々携帯電話会社変えたんだった。私はなんで教えてもらってないのだろう。
 そしてまた一時間たった。買ったばかりのiPodにはまだあまり曲が入ってなくて二週目に入ってしまった。二週目の最初にまた気に食わない曲がかかって舌打ちした時、しばらくぶりに携帯電話が鳴った。見知らぬ電話番号。母からからだろう。
「ねぇ。何で私に番号教えてくれてなかったの!?」
「え…?何でって、ごめん。これ俺の番号、登録しといてな…」
俺?違った。母と信じて疑わずにいたら、違った。何でこんなときに限って…。
「ごめん。勘違い。お母さんだと思ったんです。すいません。あなた誰ですか?」
「マジかよー。お母さんて。お母さんて。小学生じゃあるまいし」大笑いされた。そりゃそうかな。私でも多分そうだろう。
「あのー。誰ですかぁ?」二度聞くのが申し訳なくて声がだんだん小さくなっていって、今聞いてる気に食わない曲と一緒にフェードアウトしてしまった。 
「あー!俺!俺!」
「俺俺詐欺?」
「違う。違う。そんな時代遅れな…。俺だよ。おんなじ部活の佐武。明日試合あるだろ?その連絡。やっぱ面白いなぁお前」俺俺詐欺は時代遅れだったと知って少しショックを受けた。
「そうかなぁ。そして明日試合だったんだね」
「知らなかったのかよ!一年生最初の試合ってみんな張り切ってたぜ。明日集合場所は―――」
その時、家の外を走る音とインターホンの音が鳴り響いた。
「佐武君。ごめん。私いかなきゃ」
「は?おい。俺まだちょっと…?」
「ごめんね、また後で」私はそういって電話を切り玄関を飛び出した。
携帯電話の向こうで、佐武君が頑張れと言ってくれてる気がした。

そうして私は、まさか追いかけてくるとは思ってなかっただろう犯人を追いかけ、走る。

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2008年12月 5日 (金)

連載小説「その飛行機、35円」4

その飛行機、35円。第四話「そのおでん、50円」

その日の夜は季節のわりには少し寒くて、誘拐犯に貸してやるつもりだった掛け布団をはぎとって私の分と重ねることにした。
それでもやっぱり夏用の布団じゃ寒くって温かいものをコンビニに買いに行くことにした。
「コンビニに買い物に行ってくるから、留守番しといてね。絶っっっ対あさるなよ」
「はい。絶対あさらないです。この薄暗く超寒く超狭い押入の中で眠っています。はい。なんならビデオでも撮っといてくださいよ。はい。絶対動きません。」
そう誘拐犯は言った。
私は解放されている。このまま逃げてもいいんじゃないかと思う。私の家に誘拐犯がいて、私は外にいる。あいつは一体私をどんなに信用しているのだろうか。
「こんばんはー」店長らしき人が、入店時になるピロピロと言う音よりも大きく、あいさつしてきたから私もビックリして「こんばんは」と言った。
「君、東京出身じゃないよね」
「どうしてわかったんですか?」
「僕はね、何かわかるんだよ。この人は何県出身だなぁとか、何が食べたいのかなぁとか」店長はとても自慢げに言った。
「じゃあ私の出身県と食べたい物。当ててみてくださいよ」
「君はねぇ。宮崎県出身でしょ。食べたいものは、アイスかな。夏だしね」
「え…?」全然違う。「すいません。おでんの大根ください」
「違うんですか?」
「はい…両方」
「……50円になります」
むちゃくちゃ気まずくなり、店長との会話も途絶えた。
店を出る時にすれ違った男に店長は、「おはようございまーす」とさっきと同じくらいの大きい声で言うから空を見た。もう朝になっていた。
朝焼けってこんなにきれいだったかなぁ。しばらく見とれていたら、さっきすれ違った人がもう店から出てきていた。気付かないうちにそんなに時間がたっていたのか。
誘拐犯も押入れに入りっぱなしかもしれないから早く帰らないと。朝焼けを見るのをやめ、再び視界を地上に戻す。
そしたら、さっきまでは無かったであろう明らかに目立つピンク色をした財布が落ちていた。こんなに目立つ色をしていたら店を出てきたときに気づくだろうから、その後だろう。さっきすれ違った人の落とし物だろうか。
あたりを見回しても誰もいないし、警察に届けるにしろ、一度家に持ち帰ることにした。

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2008年12月 2日 (火)

連載小説「その飛行機、35円」3

その飛行機、35円。第三話「その電車賃、5350円②」

電車は都心のほうへ向かっている。
始発駅から人がたくさん乗っていたのに私は驚いた。
「いやぁ、それにしても楽しみだねぇ」
私の隣に座る誘拐犯が愉快気に言った。
「だから何しに行くのって?何処に行くの?」
「そりゃあまずはあんたの家だろ?」
私の隣に座る誘拐犯が愉快気に言った。
「私の家に来るの?」東京の親戚に頼んで借りてもらったアパートのことだろう。
「そりゃそうだろ」
「信じらんない」あなたが?誘拐犯が?私の家に?「信じらんない」
「二回も言わなくていいだろ。じゃあ東京のことを何も知らない俺に一人で夜をさまよい歩けって言うのかい?」
「泊まるの!?」
「そりゃそうだろ」
私の隣に座る誘拐犯が愉快気に言った。
「泊まるって…常識的に考えてダメでしょ。非常識的に考えたってダメだかんね」
「えー!じゃあ今日中に終わらせないと…」誘拐犯はやたらと感情的に言った。
「だから!何を?」
「飛行機をハイジャック」こともなさげに彼はいう
「ウソ!」
「ウソ」こともなさげに彼はいう。「友人に会いに行きてぇんだ」
「はっ?」思わず私は口にした。
「来たぞ!本日二回目の「はっ?」だから友人に会いに行きてーの」
「会いに行けばいいじゃん。なんで私を誘拐すんの」
「そこはまぁ、しょうがないの。俺は今のところあんたが必要なんだよ」
「意味分かんない」
本当に。この人は何考えているのだろう。私は、誘拐されているのだろうか。
「押入ね。」
「ん?」
「あんたは猫みたいに押入でねやがれ」ついに私は誘拐犯を「あんた」呼ばわりした。
「そりゃお前。あれはロボットだろ?ロボットと同じ扱いかよ」
「ロボットと同じ扱いをされたことに感謝すべきだね」

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2008年12月 1日 (月)

連載小説「その飛行機、35円」2

その飛行機、35円。第二話「その電車賃、5350円」

その駅は、町の中心から少し外れた山の麓にあった。
私は買ったばかりでアドレス帳はまだ心細い携帯電話と、バイトして貯めたこの年代にしては心強い財布と、地図と―――もういいや。鞄の中身の確認は趣味と間違えられそうなくらいした。
今日は東京に上京する日。家族とも、友達とも、しばらくお別れする日。
後押ししてくれた母親と、最後まで反対し続けた父親は見送りには来なかった。
友達が数人、駅までついてきてくれた。
「あんたほんとに行っちゃうんだね」
「うん。高校落ちたしね」私は、努力もせずに偏差値の壁を乗り越えようと単願で県内トップ5校に受け、新潟の「潟」の「臼」を「白」と書いたため落選した。
でも、そんなのどうでもよかった。友達が来てくれただけでもう充分だ。
発車のベルが鳴り。自由席でも席がガラガラの特急電車に乗り込む。
電車は出発し、見慣れた町も、山の向こうに消えた。
単調な景色には少し飽きてきて。私は気づいたら眠っていた。

 目を覚ますとそこは、私がこの15年間あこがれ続けた東京だった。
東京だったのだが、そこは山の中だった。
「おっ?目覚ました?」誰かが声をかけてきた
「誰?」私は見ず知らずの人間が知らない場所でいきなり目を覚ました直後に言われたのならかなりの確率で言うであろう台詞を言った。
「ん?俺?俺はねぇ。誘拐犯。だけどなぁ、そこらんのやつらとは違うわけよ」
「何が?」
「まず最初に。おまえはあまり怖がってそうに見えない。普通誘拐犯と聞いたら怖がる。そうだろ?そこがまぁ俺のカリスマ性というか。まっそんな感じ」
誘拐犯にカリスマ性も何もないだろうと思ったが続きを聞く。
「次に、俺は何も要求しない」
「はっ?」私は思わずそう言ってしまった。
「だろ?そう思うだろ?しかも俺は今の「はっ?」に対して何も言わないわけだよ。やっぱり凄いだろ?俺はさ、周りのやつに尊敬されるような誘拐犯を目指してんだよ」
「じゃあなんで私を誘拐したの?」私は自分がタメ口なのに気付いたが、コイツなら大丈夫だろう。誘拐犯に対してそう思った。
「それは言えないんだけどさ、ほかの質問なら受け付けるぜ。3つ目に俺は常にオープンな誘拐犯でいたいんだ。愉快な誘拐犯だ」
愉快な誘拐犯。それはまあ是非頑張っていただきたいのだが。私を誘拐するのはいただけない。
「じゃあ、私はどうなるの?」
「お前。東京に詳しい?」
東京に来たのは初めてだ。初めてだが東京なら並の関東人より詳しい自身があった。三ツ星レストランの名前住所電話番号を暗記しているほどだ。
「まぁ。詳しいかな」
「そんでまぁおれの要求はお前に東京の案内をしてほしいんだよ。人間カーナビってやつ?」
「要求してんじゃん」

続く

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2008年11月11日 (火)

連載小説「その飛行機、35円」1

その飛行機、35円。第一話「そのコロッケ、65円」

笹塚和也がその交差点を渡ったのは、夜が明ける直前だった。
しばらく東京に単身赴任していたが、今日やっと地元に帰れることになった。
嬉しいとはいえ、少しは東京にも情ができたので、今日一日満喫してから帰ろうと思っていた。
和也はもうかれこれ数時間は歩き回っていたから、小腹がすいていた。
丁度、コンビニを見つけたので、はいることにした。
「おはようございまーす」店長らしき人が、入店時になるピロピロと言う音よりも大きく、あいさつしてきたから和也もビックリして「おはようございます」と言った。
「北海道の人ですね?」不意に店長が聞いてきた。
「なんでわかるんですか?」
「人の出身地と好きな食べ物を当てるのには自信があるんです。当てるというか、もうわかるんです」
「すごいですね。じゃあ今僕が何を食べたいのかわかりますか?」
「おにぎりでしょう」店長は即答する。
「じゃあコロッケもらっていいですか」
店長は相当びっくりした顔だった。「違うんですか?」
「違いますね。はい。出身地も」
店長は唖然としている。レジの行列がどんどん長くなる。暇な時間ほど長く感じることはない。そして、長い眠りから覚めたかのように店長が我に帰った。
「はい。コロッケですね。65円です。1000円お預かりします。935円のお釣りになります。ありがとうございました。」
ピンク色の、和也が持つには不自然な感じの財布に、和也はお釣りを入れる。単身赴任する前に娘からもらった財布だった。

さて次はどこへ行こうか。和也はまた、交差点を渡り歩いて行く。

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2008年8月 9日 (土)

いきなり第5話

 「なぁ、お前さっきから何言ってんの?」
三島にそう言われてハッとした。午後10時。普段なら家でビールでも飲んでる時間だ。
「え?俺なんか言ってた?」
「うん。なんかね。呟いてた」
「何て言ってた?」
「それがわかんねぇから聞いてんだろ?」
それもそうだ。と思って新聞に目をやったが、もう全部1面から33面まで広告の隅から隅さえも全部読んだ。それくらい暇だったのが、もっと暇になってしまった。
「美奈穂さんはまだこないんですかぁ?」三島がきいた。そんなもん。こっちがききたいくらいな程、駅前で瀬谷美奈穂をまっている。
「何だよ、それ。瀬谷のまね?てかよぉ、あいつ本当にくんの?」
「だからこうやって待ってんだろ?そうじゃなかったらこんなところでお前と4時間も一緒にいるわけないだろ?家にいて、一休みして、寝るよ」
「俺だってそうだけどさぁ…」
美奈穂はまだ来ない。全然来ない。本当に来ない。来ない。来ない。来な。来……
その時、6両編成の電車が駅に到着した。快速電車だ。こじんまりした駅にはそれだって窮屈で、こじんまりしたこの町には、それですら、何か都会的なものを感じてしまう長さだ。
「なぁ、あいつこれに乗ってんのかなぁ」俺はたまらず三島に聞いた。
「それ、何回期待した?」
「だよなぁ」
駅舎から人があふれてきた。本数が少ないからその分電車に乗っていた人は多い。
「いる?」
「いるわけねぇだろ。」
「お前それ本当に人を待ってる人のセリフかよ。」
「そうだなぁ。待ってるんだよ。それは本当に。」
美奈穂とは数年間会ってない。あれから色々あったし、あいつも、色々あって、そして今日ここに来るんだろうな。
 やっぱり美奈穂は乗ってなかった。なんかこういうことってよくあるよなぁ。あの時の美奈穂もこういう気持ちだったのかもしれない。
「俺さっきなんか呟いてたんだろ?」
「あぁ。うん。」
「ごめんな。って言ってたのかもしれねぇな。」
「無意識に?ってかお前それはいつも言ってるだろ?」
「まぁ、今更って位言ってるな」
「あれだな、美奈穂が来ないのもお前に復讐してんのかもな。」
「だとしたらいつまでも来ないなぁ」やっぱり、俺はひどいことをしたんだなぁ。
「でも今ここで復讐しちゃったらあいつ、一生お前にチビチビいって生きてく、っつってたのに、できなくなるから、それはないな。」
「かなぁ」
駅には2両編成の列車が到着していた。皆快速に乗ってきているから人数はまばらだ。
「あ、あれ、美奈穂じゃないか?」
三島が指さした先には、全くの別人。
「ぜんぜん違うじゃねぇか。」
「やっぱりこねぇなぁ」
午後11時。終電まであと2本。

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2007年12月30日 (日)

いきなり42話

「こんなんでいいのかなぁ」突然、芳吉が言った、
「いいも悪いもそれはお前が決めることだろ?」
「そうなんだけどなぁ、このままだっていいんだ。だけど…」
僕は言う、こう言わなければならないんだろう。「だけど?」
「このままだと、外の世界をみれねぇきがするんだ。」
「一生か?」僕は聞く
芳吉は言う「一生だな」
「まだまだだろ、人間生きてりゃいろいろなことが起こるさ」
「と、いうかさ俺は、あいつに会いに行きたいんだよ。」
そりゃあ本当にと、いうか。だなと僕は芳吉を見る
「あいつって?」
「あいつっつったらあいつだよ。」
「あのなぁ。」まったく、芳吉は「今まで何人を『あいつ』って呼んできたか?わかんねぇだろ?多すぎるんだよ。だからお前の言う『あいつ』が誰なのかお前がテレパシーでも赤外線でも口でも教えてくんねぇと。」
芳吉は語ろうとした。そのとたん芳吉の顔は赤くなっていく。
僕はそれでわかった。「わかった。あいつだろ?」
芳吉は笑った。「結局『あいつ』じゃねぇか。」
よっこいしょ。と言って芳吉は立ち上がった。
「もう行くのか?」僕は聞いた。
「ああ」芳吉は冬の風を感じながら夕日をじっと見つめていた。「めしくってからな。」
僕は笑った。やっぱりなんだかんだいっても芳吉は芳吉なんだなぁ。とつくづくおもった。

あいつも芳吉に会えたらそんなふうに笑っていれたら僕としても嬉しい。


(奇跡が起きたら続く)

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